サラブレッドは空を飛ぶ・完結

3回に渡り「サラブレッドは空を飛ぶ」のタイトルで、障害レースについて寄稿させて戴いた。
今回はその結びとして、障害レースや障害馬たちと、私たちファンの関係について綴りたい。

 

 

ファンはなぜ、障害レースに、障害馬たちに強く惹かれるのか。そんな事をふと考えた。

 

華麗な飛越、障害へ向かってゆく力強さ、障害を見据える凜とした眼差し……もちろんそういった、いわゆる障害馬の美としての要素がある。

 

しかし、それだけではない。
ここまでファンを強く惹きつけるものは、一体何だろう。
そんな疑問が何度か頭をよぎり、自分なりの答えを見つけた。

 

障害レースは、人生。

 

コース上に置かれた障害は、まるで私たちの人生における困難のよう。それを華麗に飛越してゆく姿に、私達は自分を重ねるのではないか。

 

「きっと、乗り越えられない障害など、ない。」

 

障害へ果敢に向かっていく彼らの姿を見ていると、そんな希望が湧いてくる。
障害馬たちはその飛越をもって、私たちにそんな事を伝えてくれるようにさえ思える。

 

 

もう一つ、私たちが障害馬から教わる事がある。

 

日本の障害馬たちの多くは、一度は平地で挫折を味わった馬たちだ。
しかし彼らは、「飛ぶ」という華やかな才能を与えられた。

 

サラブレッドだけではない。人間誰しも、何かしらのチャンスや才を与えられているというのが持論だ。

 

もちろんそれを活かすには、自ら行動し、努力を惜しまない事が必要不可欠である。
競馬場という舞台で華麗なジャンプを魅せる障害馬たちも、地道な飛越練習を欠かさない。

 

そしてそんな道を自らの力で掴み取った障害馬。
彼らの堂々とした姿、華麗な飛越に、かつての平地競走への未練があるようには思えない。

 

「華は何度でも咲き誇る。」

 

挫折を糧に、挑戦していこう。
そんな勇気、希望さえをも与えてくれる存在が、彼らなのかもしれない。

 

障害馬たちが、今日も華麗に障害を飛越してゆく。
その姿に、勇気、希望、夢……誰しもが密かに抱いているであろうものを重ね、人は彼らを応援するのではなかろうか。

 

 

サラブレッドは空を飛ぶ。
彼らの未来へ向かって、私たちの夢と共に。

 

障害馬たちが目の前を駈け抜けるのは瞬く間。
しかし彼らが残してくれたものは、きっと永遠に、私たちの中に存在し続ける。

 

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文・川井旭

写真・ラクト